建築コストから見た ―― 家賃の話
今回は、家賃の話です。
「なんだ、ありきたりな話題じゃん!」
と勉強熱心な家主さんに言われそうなので、少し視点を変えて建築的な観点から書いてみます。
先回のブログで 「RC新築物件に1億円投資する家主さん」 のコラムを書きました。そのなかで私は 『RC造でこの規模では、旨味が無いのでは?』 と言いました。
その訳は ↓
同一条件でも建築構造が違えば、家賃設定が変わる事実
があるからです。
●家賃設定の根拠とは?
新築時のアパート・マンションは、家賃設定をどうやって決めるのでしょうか?
- デベロッパーや建築会社が、仲介店と話し合って決める
- 近隣の新築相場家賃にあわせる
- 建築コストを考慮して、経営収支 (利回り) とリンクさせて決める
これら1〜3は、ある意味全部正解です。 “すべてに合致して、経営的に納得できる数字になれば” という注釈がつきますが ・・・
そこで、ベースになる考え方としては3の 「建築コストと経営収支のバランス」 を満足させることが、最優先となります。
ここで、具体例を挙げてみます。同じ立地、間取りとして↓
-
- 木造3階 アパート 12戸
- RC造5階 マンション 20戸
どちらが、家賃は高くなるでしょう? 3の観点から家賃を設定するのであれば、RC5階の方を家賃は高くせざるを得ません。
外壁などの建物の仕様により、一概には言えませんが、このRC造5階20戸は木造3階12戸のほぼ倍の建築費が掛かります。もし家賃が同じの場合、RC造の戸数を24戸にしなければなければ利回りは下がります。
言い換えれば、木造と同じ利回りを出すために、RC造の家賃を高くしなければならない訳です。もし、近隣に木造とRC造の新築があり、部屋の仕様が同じであれば入居者は 「安い家賃の木造新築を選択」 するのではないでしょうか?
まあ、これは比較論としての単純な例ですので
実際には ↓
-
- 木造よりRC造のグレード感や防音性能が好まれる傾向
- 諸税、減価償却及び保険費用の差
- 防火地域の問題 (木造建築上の制約、コスト増)
などを考慮する必要があります。
なかなか難しい問題です。しかし、少なくとも経営上の収支を無視して、前出の1や2のように相場などに合わせて家賃設定すれば
↓
当然ながら 「建築コストが高ければ利回りが低下」 しますし 「投資金額に比例してリスクも高まる」 のは事実です。
結局は、あらゆる条件を包括的に検討しなければ、結論は出ませんね。
すみません ・・・ なんだか、中途半端なコラムになりました。 (汗)
【追記】
建築絡みで、気になっていることがあります。最近、確認申請が下りにくくなっているようですね。 (役所も混乱している?)
これは構造計算書偽装事件を踏まえ、2006年6月、建基法が改正された影響のせいだと言われています。2007年6月20日以降に確認申請を受け付けるものについて、一定の高さ以上等の建築物は、指定構造計算適合性判定機関等による構造計算の審査が行われます。 (確認申請書の厚さは、従来の3倍以上? 半端じゃないです)
木造の場合、N値計算や壁量計算はもともと必要でしたが、詳細計算である構造計算にあわせた金物設計の部分などで、混乱しているようです。
(国土交通省の設計指針が、6月20日施行時に間に合わなかった ⇒ これも元凶?)
最近の社会保険庁問題もそうですが 「わが国はどうなっちゃったの!」 って感じです。行政を信じられ無いなんて、寂しい話です。
この問題が経済に及ぼす影響は、計り知れないと思います。受注があるのに住宅の着工数減少するなんて ・・・
(8月度 木造着工数40%減 マンション着工数 約60%減)
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