家主さんの決断 ① ― 新築か、リフォーム か? 

不動産会社勤務時代の経営相談の中で、どうしても避けて通ることのできないテーマがありました。それは 「新築か、リフォームか?」 という問題でした。経営に熱心な家主さんの (根本的にテコ入れが必要と自覚している) 場合は、かなり真剣なやり取りになることも・・・



家主さん 「この物件は父の代から25年間、十分に稼いでくれた。今は空き室が多いがリフォームすることによって、また新築時の様な利回りを確保しながら、この先経営ができるでしょうか?」


私    「この物件に関しては、地域の条件 (立地・顧客ニーズ) と建物の仕様・状態から、その可能性 (高利回り・満室引渡しの) は高いと思います。」


家主さん 「実は・・・30年一括借り上げで、新築の話も進めているところです。利回りは10%程度だが、その費用が解体費を含め1億円。一括借り上げは魅力だが、どうしたものか・・・」


  「これから詳しい内容をお聞きしなければなりませんが、今いえることは賃貸市場の動向から見ると、ここは費用対効果・リスクヘッジを重視するべきだと思います。一見矛盾しているようですが、 「30年一括借り上げ」 は家主さんの重荷になる可能性がありますよ。」


この家主さんは、比較的オープンにお話をしてくださる方でした。参考例として詳細をお伝えします。

  • 新築とリフォーム ― 家主さんの決断は?

この家主さんの今回相談物件の詳細です。(その他複数棟所有です)

    • 建物仕様・・・築25年 鉄骨造4階建て 地下駐車場 総戸数24戸 2LDK
    • 立地条件・・・北区の地下鉄駅徒歩10分圏内 
    • 空室状況・・・24戸中13戸空室 (入居者の家賃帯 38,000〜45,000円)
    • 空室原因・・・外観ほぼノーメンテ 室内の仕様が顧客のニーズを満たしていない (LD以外が和室、脱衣洗面なし、収納が押入れ以外ない、風呂(UB)が枡風呂、キッチンがLDにむき出し、など) 共用部・エントランスのイメージ暗い等 

 
ですが、私の経験則上からも、また実際の地域マーケティングリサーチにおいでも、十分に再生可能な物件の内容でした。


その提案内容の概略です。

    • 費用対効果・・・改修費3,507万円 (税込) 実質利回り (15年) 21.4%
    • 改修戸数 ・・・空き室の2LDK7戸改修、残りの6戸を広めの1LDK変更、計13戸改修
    • 改修内容 ・・・内部は、新築同様へ (独立対面キッチン、フローリング化、設備一新、クローゼット、浴室乾燥暖房付、セキュリティーシステム他) 外部は、ALCの上からガルバリウム鋼板、防水工事、外付け断熱サッシ、エントランス・共用部改修他
    • 引渡し条件・・・引渡し時、満室保証

※引渡し時の満室保証条件については、設定した家賃・駐車場代を採用したの場合に有効となります。 
※実質利回りは、融資期間の空室率を加味して算出しています。


いずれにしろ、リフォームの場合はイニシャルコスト (初期経費) の部分でかなり有利です。そのあたりが、実質利回りに現れてきます。


しかし・・・結論から申しますと、この家主さんはサブリース契約を売り物にしている会社において 「新築」 を選ばれました。実際にS造地下1階、地上5階建て34戸のオール1LDKを建設されました。

    1. この家主さんが、なぜ「新築」を選んだのか?
    2. このサブリース契約の中身は?


ここのところは、次回お話させていただきます。